どうしてマーケティング系ツールは使われなくなるのか

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この記事について

[想定している読者像]
ブランドマネージャー、マーケティングマネージャー、経営者の方。マーケティングのツールだらけになって管理ができていない、無駄な費用ではないかと懸念している方。

[コンテンツ属性]
ビジネス:★★★★★
データアナリティクス:★☆☆☆☆
エンジニアリング:☆☆☆☆☆

この記事では、「マーケティング系ツール」とは、月額・年額課金のサブスクリプション型SaaS(Webサービス)を指すものとします。

ツール使いこなせていますか?

マーケティングオートメーション(MA)、顧客関係管理(CRM)、ビジネス・インテリジェンス(BI)などのマーケティング関連ツールが次々とリリースされています。安価なスモールビジネス版から高価なエンタープライズ版まで、ユーザーに合った価格ラインで提供されているため、導入している、またはしていたという企業は多いのではないでしょうか。一方でそれらを使いこなしている企業は思いのほか少ないというのが現状です。

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「機能を使いこなせていない」というフレーズを額面通りに受け取り、SaaS事業者はカスタマーサクセスを強化し、顧客に「使い方」を教えているようです。しかし、それだけで十分だとは私たちは思いません。弊社では、「使いこなせない」という言葉の背後には、「使い方」だけでなく、「自社がどのシーンで利用すべきか」が理解できないことが問題だと考えています。つまり、マーケティング計画の中で自社が何を達成したいのかが明確で、それを実現するためのツールであるはずなのですが、その定義が曖昧なままツールを導入したため、ツールをいつ、どのような状況で使えば良いのかが不明瞭になってしまっている状況です。

誰も使わないツール

「今やるべきことはこのツールでリードにメールを送ることなのか?」という疑問に対し、ツールやベンダーは答えてくれません。このためマーケティング担当者はオペレーションの余裕がある時間に、場当たり的な取り組みをすることが多くなります。その結果、ツールの稼働率が低下し、さらに結果も出ないまま、毎月の利用料だけが無駄になります。私たちの会社もこのような失敗を経験しました。使わないツールの利用料をただ払い続けるのは無駄です。サブスクリプションサービスのように簡単に解約できるものであれば、ダメージはそれほど大きくないですが、統計や機械学習モデルを作成した場合、後の祭りです。

どうしてそうなるのか

結論から言えば、マーケティング戦略がない(か適切ではない)のにツールを導入するからです。マーケティング戦略がないと、目標に対しての明確なアクションを策定できないため、担当者の裁量で行われることになります。ではなぜこの状態でツールを導入するのか?ここからは憶測で恐縮ですが、各企業のDX推進の目標設定がツールの導入になっているのではないかと考えています。

マーケティング計画とプロセスを定義しよう

マーケティング戦略の徹底した立案と、それにもとづくプロセス・オペレーションの定義が必要と弊社は考えます。現状と目標のギャップとそれに対する原因仮説とソリューション仮説の立案、アクション策定を行い、アナログで一旦オペレーションを定義する必要があります。なぜアナログオペレーションが必要かというと、全てのデジタルオペレーションはアナログオペレーションの効率化であるからです。つまりデジタルはアナログの仕組みを効率化するものであって、そもそもその土台(オペレーションやプロセス)がないところにデジタルツールをアドオンしたところで「砂上の楼閣」に過ぎないのです。ツールはオペレーションやプロセスを定義しないことに改めて気づくことが重要です。

例えばGmailや会計系Saasではこのような問題はあまり聞きません、なぜならばそれらが果たす役割は、「手紙、FAX」「記帳、仕訳、請求書」のように、アナログの時代からオペレーションが存在したからです。

上流の下流工程

マーケティング戦略は一般的に全社戦略の下位レイヤーに位置づけられるものとみなされます。しかし、これでも実は、マーケティングのオペレーションやプロセスといった現場に近い戦術領域とは若干の距離があります。そこで、それらを結ぶ役割が必要となります。弊社はそれを「上流の中の下流工程」と呼んでいます。マーケティング戦略以上を上流とした場合、具体的なオペレーションまでをブリッジする役割を持ちます。マーケティングの打ち手の少なかった時代では、あまり重要視されなかったポジションですが、現在のようなあまりにも打ち手やチャネルが分散化した時代において、プロセス・オペレーションの定義には必須のポジションです。

上流の下流

プロセスを定義しよう

上位戦略と整合した、マーケティング戦略の目標から逆算してプロセスを設定します。本記事の例ではデジタルマーケティングによる認知獲得を目標としています。

大まかすぎる例ですが、実際はもっと詳細になると思います。

メディアミックスを考えます

複雑に考えると大変なので、メディアは大きく分けて①オウンド(自社HP)②ペイド(広告)③ソーシャル(XやFacebookなど)に分類します。以下は一例ですが、各プロセスごとのKPIも定義します。KPIは行動KPIと業績KPIに分けて考えます。行動KPIとは、「顧客訪問数」や「架電数」のような、担当者が自分でコントロール可能なものを指します。

[以下は例:実際は関係者全員で頑張って定義します]

データの活用も考えよう

各種オペレーションに関連するデータを収集・可視化する仕組みを構築します。最初はExcelで十分です(効率化よりも仕組み作りを優先します)。

各担当者のタスクを決めよう

各タスクは戦略・戦術と同様に、現状から目標までのギャップを明らかにし、それぞれが仮説を立て、アクションを策定して実行し、検証します。内製化を進めるためには、このサイクルに各人が慣れることが重要です。

やっとツールの導入を検討する

この段階まで定義ができたら、SaaSなどのツールを検討します。もちろん、Excelやスプレッドシートなどの無料ツールだけで運用が可能なら、それでも構いません。

アナログオペレーションがしっかりと定義できていれば、Saasベンダーのリサーチも迷うことはないはずです。

弊社サービス

弊社はこれらのオペレーション体制の構築及び、データ統合やダッシュボードの構築などでお客様のデータドリブン・マーケティングオペレーションの内製化を支援します。

無料相談大歓迎です。ご興味ございましたら、お問い合わせはこちらから宜しくお願い致します。

ご清読ありがとうございました。

Author Profile

株式会社Crosstab 代表取締役 漆畑充
株式会社Crosstab 代表取締役 漆畑充
2007年より金融機関向けデータ分析業務に従事。与信及びカードローンのマーケテイングに関する数理モデルを作成。その後大手ネット広告会社にてアドテクノロジーに関するデータ解析を行う。またクライアントに対してデータ分析支援及び提言/コンサルティング業務を行う。統計モデルの作成及び特にビジネスアウトプットを重視した分析が得意領域である。統計検定1級。
技術・研究のこと:qiita
その他の個人的興味:note


お問い合わせは株式会社Crosstabまでお願いいたします
2007年より金融機関向けデータ分析業務に従事。与信及びカードローンのマーケテイングに関する数理モデルを作成。その後大手ネット広告会社にてアドテクノロジーに関するデータ解析を行う。またクライアントに対してデータ分析支援及び提言/コンサルティング業務を行う。統計モデルの作成及び特にビジネスアウトプットを重視した分析が得意領域である。統計検定1級。 技術・研究のこと:qiita その他の個人的興味:note お問い合わせは株式会社Crosstabまでお願いいたします
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